モバP「幸と不幸の交差点」
P「お疲れさん」 杏「うおおお…久々の休みだ」 P「いや、そんなことはないと思うけど」 杏「杏は週休8日を要求したのに…」 P「ネタで言ってるんだろ?」 杏「半分くらいは本気だよ」 P「一週間は7日しかないぞ?」 杏「いや、そうだけど…分かってるよね?」 P「分かってるって」 杏「ならいいけどさー」 P「どうする明日は起こすか?」 杏「いや、一日中寝てる予定だから起こさなくていいよ」 P「そうか、それじゃ。ゆっくりしろよ」 杏「ん。それじゃ」 前スレ モバP「体と心と勇気の処方箋」 シリーズスレ古典シリーズ
杏「さーてと、何しようと誰も言ってこないし、ゲームやろうかなぁ…」 杏「それとも、新しい飴の味見でも…」 杏「うーん悩むねぇ…ぐぅ」スゥ
P「ふぅ…俺は明日も仕事だなぁ」 P「眠い。えーと、明日の予定は…」 P(撮影に、送迎にえーと…どうしようか) P「ちひろさんに頼まないとキツいかもなぁ」 P「しかし、よく死なないな俺」 コンコン P「はい。空いてまーす」 周子「やっほー」 卯月「こんばんはー」 夕美「うわー、こんな時間まで働いてたんだ…」 P「ん?お前らどうしたんだ?」 周子「あたしの部屋で遊んでたんだよねー。その時Pさんの声が聞こえてさ」 P「なるほどな」
P「美味しいな」 卯月「本当ですか?」 周子「まぁ、当然よね」 夕美「今度何か作るねPさん」 P「あぁ、楽しみにしてるよ」 * 卯月「そう言えば、杏ちゃんが隣に住んでるんだっけ?」 P「まぁ、正確にはもう少し離れてるけどな。多分物音が聞こえないから寝てるんだろうな」 周子「寝るの早いね…」 * P「それじゃ、二人共送っていくよ」 卯月「ありがとうございまーす!」 夕美「あのDVDは封印してね」 P「あぁ、気が向いたら」 周子(ずっと取っておくんだろうなぁ…)
昼 杏「……うわ。もう昼だ。ちょっと杏の周りだけ時間進むの早くない?」 「……」スー 杏「うわー、夢じゃなかったんだ」 杏(杏が言えた義理じゃないけど、随分小さい子だね) 「……」パチ 杏「あ、起きた」 「……」ジー 杏「な、なに…?」 「……頂戴」 杏「これ?」 「……」コクン 杏「まぁ、杏のお気に入りだけどあげるよ」 「……♪」 杏「なるほど。意外とイケる口なんだね」 「……」
杏「まぁ、杏の家にはそれしかないから嫌いでも食べるしかないんだけどね」 ピンポーン 杏「…ん?」 宅急便「こんちわーす」 杏「あぁ、うん。ハンコね」 宅急便「ありがとうございましたー」 杏「おー、ご飯だ。珍しい」 杏「食べる?」 「……」コクン 杏「なら適当にどうぞー」 杏「杏は寝るから」 「……」
杏「ふーん。それならそれでいいけど」 杏「あっ、杏が何かやると思ったら大間違いだからね」 「……?」 杏「無反応も無反応でつまらないな…。ゲームでもしよっと」 ポチ 「……」 杏「そう言えば、どこから来たのさ」 「…分からない」 杏「ふーん。ま。いいけどね。一緒にやる?」 「……」コクン 杏「それじゃ、コントローラ取って、そこに挿して」 杏「まさか、Pさんと周子とやるように置いてあったのが役に立つとはね」 杏「それじゃ、はじめー」
杏「たまにやると楽しいね。もうしばらくはいいけど…」 杏「うぇ、もう明日は仕事じゃん」 杏「寝よっと…」グー 「……」 杏「あ、そう言えば、どうすんの? 杏は寝るからゲームやっててもいいし、寝ててもいいよ」 「……」コク 杏「んじゃ、おやすみ」
杏「ほら、これも美味しいからあげる」 「…ありがと」 杏「別に大したことないよ。そんな浴衣みたいな恰好じゃ寒くない?」 杏「なんだったら炬燵の中にでもいたら?」バタンッ
車内 P「しかし、いきなりこんな仕事が入ってくるなんてな」 杏「杏的には、入ってこなくていいんだけどね」 P「まぁ、そう言うなって」 杏「そういや、周子は?」 P「寝てるんじゃないか?」 杏「あっちは特に起こすとかはしないんだね」 P「まぁな」 * 杏「そう言えば、今これ、どこに向かってるの?」 P「テレビ局だな。ちょっと打ち合わせをしようかと」 杏「ふぅん。着いたら起こして」 P「分かった」
テレビ局 P「起きろ杏」 杏「…ん」 P「とりあえずこれ喰え」 杏「ん。うわ、はっか飴じゃん」 P「目は覚めただろ?」 杏「まぁね」 P「それじゃ、頑張ろうな」 杏「…ま、ほどほどにね」
会議室 P「えぇ、つまりこういうことで――」 杏(あれ、これ杏要らなかったんじゃない?) 「……♪」 杏(いつの間にか、ここにいるし…) 杏(でも、杏以外には見えてないっぽいんだよね) P「それで、今回は、そちらの案でうちの双葉を――」
車内 P「お疲れ様」 杏「いや、杏は何もしてないんだけど…」 P「顔見せの意味が強かったからな。寝もしなかったし良かったぞ」 杏「いつでもどこでも寝てるわけじゃないからね」 P「そうだとしてもな」 * P「そう言えばさ、一つ聞いていいか?」 杏「どうしたの?」 P「俺が話してる時に隣向いてたけどなんかあったか?」 杏「…よく見てるね」 P「まぁ、ちょっと気になってさ」 杏「いや、大した理由はないかな」 P「ならいいが」
事務所 P「おはようございます」 杏「もう、今日はいいよね?」 P「いや、ダメだろ」 ちひろ「おはようございます」 菜々「おはようございまーす」 蘭子「やみのまー」 P「お、おはよう」 凛「……ん? 新しい子?」 P「何がだ?」 凛「いや、別に」
P「それじゃ、俺は菜々さんと蘭子を送っていきますね」 ちひろ「はーい。それじゃ、行ってらっしゃい」 杏「凛さ、もしかしてさ」 凛「多分Pさんとちひろさん以外全員見えてるっぽいよ」 杏「若いからかな」 凛「どうなんだろう…」 卯月「おはようございまーす。あ、誰の妹ですかこの子」 楓「かみのみ…。今日も寒いですね」 「……♪」 凛「二十歳くらいまでは見えるのかな」 杏「今度、菜々さんに試してみよう」
卯月「なるほど…そうなんですね」 杏「うん。そうなんだよね」 楓「…ここら辺にいるんですか?」 凛「楓さん、もうちょっと左かな」 楓「少し落ち込みますね…」シュン ちひろ「わ、私も見えませんからっ!」 楓「それはそうでしょうけど…」 ちひろ「え、当たり前なんですか」
楓「日本各地のものなんですけど、私も行く時間がなくてですね…」 凛「おめでと楓さん」 楓「飲みますか?」 凛「え、いや…未成年だし」 楓「いえ、なんだか知りませんが、みかんジュースも入ってました」 凛「なんでなんだろう…」 楓「多分、みかんが名産なんでしょうね。未成年の子たちでどうぞ」 卯月「わっ、ビンのジュースってそれだけで美味しそうだよねー。ありがとうございます」 杏「…ねむ」
ちひろ「それじゃ、私も皆を送ってきますんで楓さんお願いします」 楓「はーい」 ちひろ「お酒は飲んじゃダメですよ」 楓「今晩楽しみにしてますね」 ちひろ「え、あ、はい。分かりました」 楓(…暇だなぁ)
P「お疲れ様…あ、楓さんだけですか?」 楓「えぇ。ちひろさんは皆を送っていきました。ぐーるぐる」 P「もう、椅子で回ってる絵面にも馴れてきました」 楓「それは少し悔しいですね」 菜々「そのお酒はなんですか?」 楓「あ、これ、懸賞で当たったんですよ」 菜々「へー。そうなんですね」 楓「飲みますか?」 菜々「えっ」 P「二人共仕事が終わってからにしてください」 楓「Pさんはどうします?」 P「…時間があれば」 菜々「え、えっとナナは…」
楓「そう言えばですね」 P「はい」 楓「小さい子が事務所に来てるらしいですよ?」 P「はい?」 楓「いや、なんか来てるらしいです」 P「らしいってなんですか」 楓「私には見えないですから」 P「要領を得ないんですが…」 菜々「あ、幽霊が来たんじゃないですか?」 P「幽霊ですか? 随分と物好きですね」 菜々「誰かが憑かれちゃってるかもしれないですよ?」 P「冗談でもそういうことは言わないで下さいよ菜々さん」
菜々「はい。すみません…。でも、実際の所どうなんでしょうね」 P「さぁ…分かりませんね」 楓「でも、悪いことをしそうな感じじゃないみたいですけどね」 P「ちなみに見えてるのは誰なんですか?」 楓「私とちひろさん以外は見てましたね」 P「となると…十代だと見えるって感じですかね」 楓「そうかもしれませんね」 菜々「えっ…」 楓「あぁ、ここに十代の方がいました」 P「そうですね」 菜々「な、ナナ的には、その子見えないですけど…」
P「それじゃ、帰るぞ杏」 杏「杏、もう無理なんだけど…」 P「そりゃ、今日だけで仕事かなりこなしたからな」 杏「座敷童ってさー、幸運を持ってくるんじゃなかったっけ?」 P「アイドルとしては幸運だな」 杏「…物は言い様だね」 P「俺としては嬉しい限りだな」 杏「なんでさ」 P「杏が世間に評価されてるってことだから」 杏「……ふーん」
P「それじゃあな」 杏「じゃあね」 杏「ふぅ…」 「お疲れ…?」 杏「まぁね。杏は寝るけどどうする?」 「…寝る」 杏「そこらへんで寝ていいよ」 「…飴頂戴」 杏「全く、杏に似たのかね。ほれ」 「ありがとう」 杏「別に。それじゃ、おやすみ」
数日後 P「おはよう」 周子「おはよ。どしたの機嫌いいね」 P「まぁ、ちょっとな」 周子「ふぅん?」 杏「おはよう…」 P「おはよう杏。実はな――」 杏「まさか…」 P「今日も朝から仕事だ」 杏「かれこれ、三日連続なんだけど…」 P「頑張れ」 杏「まぁ、頑張るしかないんだけどね…」 「……♪」
P「それじゃ、お疲れ」 杏「…うん」 「お疲れ…」 杏「あ、うん。おやすみ」 「…ばいばい」 杏「あ、そうだ。飴食べる? あれ…?いないなぁ」 杏(まぁ、いいや) 杏「おやすみ…」
P宅 P「最近杏の仕事は絶好調だな…」 P(でも、そろそろ休ませてやらないと辛そうだ) P「明後日辺りにでも休みを取るか」 P「しかし、何があったんだろうな」 P「いくらなんでもツキ過ぎな気がする」 P「幸運が憑いてるってか」 P「…不謹慎だったな。それじゃ寝るか」
翌日 杏「……ん?」 杏(今日は目覚ましならなかったな) 杏「ふーん。今日はいないんだ」 杏「どこかに帰ったのかな」 杏「…もう一回寝ようかな」 杏(今日はPさんも来ないし)
昼 P「おーい、杏」 杏「んあ? どうかしたの?」 P「今日は昼から仕事だろ。行くぞ」 杏「あ、そうだっけ」 P「あぁ、と言うか、鍵くらい閉めておけって」 杏「あー、忘れてた」 P「おいおい…」 杏(いなくなったのかな…?) P「杏?」 杏「いや、なんでもないよ。行くから待ってて」 P「おう。分かった」 杏「…調子狂うなぁ」
車内 杏「……」チラッ P「後ろに何かあったか?」 杏「いや、ないけどさ」 P「……?」 杏(どこ行ったんだろ…)
事務所 杏「おはよう…」 卯月「あ、おはよー。あれ、あの子は?」 杏「…さぁ」 卯月「そうなんだー」 幸子「何かあったんですか?」 杏「別に。珍しく動いたからちょっと疲れただけだよ」 幸子「…そうですか」 * 杏「あのさ…」 P「お、どうした杏。今日はもう平気だぞ」 杏「いや、そうじゃなくてさ」 P「あぁ、飴か。ほれ」 杏「ん。いや、それでもなくて」 P「それじゃ、どうした?」 杏「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど…」 P「うん?」
P「なるほど。その子を探して欲しいんだな」 杏「…別に、そんなに訳じゃないんだけどね」 P「ただ、俺にはその子が見えないんだけどな」 杏「そ、それは…」 卯月「私達も手伝いますよっ!」 幸子「な、何か知りませんが手伝いますね」 杏「…ありがと」ボソッ * P「と言う訳でさ、周子は杏の家とか、そこら辺を探して貰っていいか?」 周子『よく分からないけど、了解。今度何か奢ってね』 P「はいはい」 周子『それじゃ、ばいばーい』
P「さて、こっちはこっちで探すか」 卯月「はい!ってPさんは見えないんですよね」 P「まぁな」 幸子「…どうするつもりですか」 P「…どうしよう」 幸子「もう、しょうがないですねぇ!ボクがいないとダメダメなんですからっ!」 卯月「それじゃ、頑張りましょう!」
P「いないみたいだな…」 幸子「ま、まだまだです」 卯月「どこ行っちゃったんだろうね」 杏「…やっぱり、いいや」 P「え?」 杏「いやさ、二人にもPさんにも悪いしさ」 杏「面倒でしょ? これだけやってくれただけでも十分だって」 杏「別に、何かしたかったってわけじゃなかったし」 卯月「杏ちゃん…」 杏「うんうん。キャラじゃなかったね。こういうのは。それじゃ、ありがと」 幸子「ま、まぁ、そういうなら…お疲れ様でした」 卯月「…帰り道で見かけたら教えるからねっ!」
P「杏…」 杏「なにさ?」 P「いいのか?」 杏「うん。眠くなってきたし」 P「そうか…」 杏「…なに?」 P「いや、杏がそれでいいならいいんだ」 杏「そ。ならこれでいいよ。これで」 杏「あー、全くらしくないことしちゃったなぁ」 杏「それじゃ、今日は電車で帰るよ。ばいばい」
事務所 杏「ふぅ、すっきりした」 P「それは良かった」 杏「これで、目覚ましをセットされることもなくなるし、飴をあげなくても済むしいいことづくめだよ」 P「杏…」 杏「杏の部屋がちょっとだけ綺麗になってたり、ゲームする相手もいなくなったけど、一人はいいよね」 P「杏」 杏「なにさ」 P「俺さ、ちょっとコンビニ行く予定があるんだけど何か欲しいものあるか?」 杏「ポッキーの夕張メロン味」 P「分かった。それじゃあな」 * 杏「あー、バレてたかも…」 杏「……」グス
コンビニ P「さて、何を買うか…」 P「あ、先に頼まれてた物でも買うか」 P「あのすみません」 店員「はい?なんでしょう」 P「ポッキーの夕張メロン味って置いてありますか?」 店員「ゆ、夕張メロン味ですか? そうですねぇ…こちらでは取扱いしていない気が…」 P「分かりました。ありがとうございます」 店員「恐らく地域限定商品だと思われますが…」 P「ですよね…」
事務所 P「杏いるか?」 杏「……」グー P「寝てるのか…」 P「ほら、起きろって」 杏「んあ? 寝てた?」 P「あぁ、悪いな。メロン味はなかった」 杏「だろうね」 P「それじゃ、帰るか」 杏「…うん」
車内 杏「そういや、今何連勤?」 P「さぁ、分からないな。数えてないから」 杏「聞きたいことがあるんだけど…」 P「どうした?」 杏「Pさんは何のためにプロデューサーやってるの?」 P「いきなりどうした?」 杏「ちょっと気になってね。やっぱり、アイドルとかの近くにいたかったとか?」 P「いや、そういうわけじゃないけどな。社長とかちひろさんの影響だよ」 杏「そうなんだ」 P「あぁ」 杏「今のやりがいは?」 P「皆をトップにすることかな」 杏「なんて言うか…凄いよね」 P「そうか?」
P「お疲れさん」 杏「…あ」 P「ん?どうした?」 杏「いや、これからもさ」 P「うん」 杏「これからも杏と一緒に仕事してよ」 P「何を今更」 杏「か、勘違いするなよっ! それが一番手っ取り早いからで…」ゴニョゴニョ P「はいはい。それじゃあおやすみ」 杏「…むぅ」 杏(お金が一番ってことは、その為にずっとプロデュースして欲しいってことなんだけど分かってるのかな…)
楓宅 楓「やっとお酒が飲めますね」 菜々「な、ナナはここにいていいんでしょうか…」 ちひろ「いいんじゃないでしょうか」 P「まさか仕事が終わってから電話が来るなんて思ってもみませんでしたよ」 P(家に着いた瞬間に掛かってくるとはなぁ) 楓「細かいことはいいじゃないですか。ほら、かんぱーい♪」 P「あ、はい」
終わりです。今年一年ありがとうございました。 もう片方も来年には書きたいと思います。
解説です。 座敷童に関してはほぼ説明はいらないでしょうから割愛します。 杏が途中で、お金の話をしましたが、あれは雨月物語の貧富論から引用しています。 抜粋しますと、世間の金銭を卑しいものとする風潮を嘆いた。「千金の子は市にも死せず」「富貴の人は王者のたのしみを同じうす」 とことわざを唱え、清貧な生き方をする賢人は賢いけれど、金の徳を重んじない点で賢明な行為ではない、と断じた。